「五体不満足」 乙武洋匡


生まれつき 五体 のうち 四体 がない青年の自伝です。
やたらと話題に上っている本だったので、「読んでみようかな〜」くらいの気持ちで買ってみましたが、読んでみたらすっかりハマッてしまいました。何が良いかって、乙武くん の前向きな生き方はもちろんのこと、彼を取り巻く周りの人々の温かさにじーーーんと来るものがあります。本を読みながら泣いてしまうなんて、久しぶりでした。

でもよ〜〜く考えると、泣いてしまうのは、実はとても失礼なことなのかもしれません。なぜなら 乙武くん の周りの人々のしていることって、本当はごくごく当たり前のことだから。。でも今の私たちはそんな当たり前のことが当たり前に出来ない。。そんな気がします。



「沈まぬ太陽」 山崎豊子


読み始めるまでは、「読みにくそうな本なんじゃないかな?」なんて考えもしましたが、 実話に基づいて書かれているからか、途中でやめられなくなってしまいました。

= かんたんなあらすじ =

2巻までは、飛行機会社の労働組合の委員長になってしまった人(恩地さん)が 委員長としての仕事をしっかりやったがために、上から目をつけられるようになり、 左遷されてしまうという話です。しかも、無理矢理委員長を押し付けられたという形にも かかわらず。。さらに「任期は1年」という約束が、2年になり、その後、左遷です。 しかも、その赴任先が「カラチ」で、現在の業務と全く関係ないところなのです。

委員長として、かなりの活躍をした恩地は、社員から見れば英雄で、 組合をあげて、人事撤回の活動を起こしてみたのだが、撤回してはくれず、 社長の「(海外赴任は)2年だけ!」という言葉(社内規則)を信じて 仕方なく赴任することにしたのです。が、2年という任期も守られなかったのです。 本当にことごとく、会社に裏切られてしまいます。次の赴任先は、「テヘラン」になり、 その後「アフリカのナイロビ」にまで行かされてしまいます。

途中で、本社へ帰る機会もあったのですが、「組合と手を切ること」が条件だったため、 恩地は、その条件を受け入れることができず、なかなか本社へ戻れずにいました。 当然、家族はものすごい被害を受けていたし。。もう、可哀相で。。(;_;)

結局、海外赴任を約10年したところで、ようやく「不正人事」が認められ、 本社に戻れるようになった というところで、2巻は終わっていました。 戻ってからも、またいろいろあるんだろうなぁ。。

3巻は、1985年に実際に起こった「御巣鷹山事故」を取り上げています。 それを読んで、今まででてきた「国民航空」というのは、「日本航空」のこと だったとわかりました。言われてみれば、昔そんな事故があったな〜と 思うのですが、記憶にはあまりないです。520名余りの死者があるなか、生存者が 4名ほどいたのですが、その方たちは、どうやら実名で登場しているようでした。 どこまでがフィクションで、どこからがノンフィクションなのかわかりませんが、 恩地さんの、モデルになった方も実際にいるようです。

それにしても、ようやく本社に帰ることができた恩地さんが、今度は 事故の遺族のお世話係とは、またしても気の毒です。 いくら本人には関係ないと言っても、遺族には「人殺しの会社の人!」と いう目で見られてしまうし。。

4巻からは、国民航空建て直しのための話です。 社長は当然、責任を取るという形になり、新しい会長を迎えることに なります。そしてその会長というのが、他社の方でありながら本当に国民航空の ことを考えているいい人なんです。いい人だからゆえに叩かれてしまいます。 金儲けのことしか考えてない人たちばっかりで、読んでいて嫌になるくらいです。 企業の裏側って、ある程度はそういうことがあるとは思ってたけど、 ここまで見せられると、うんざりです。味方だと思っていたら、そうではなかったりして、 もう誰を信用していいのかわからなくなりそうです。 今のところ、唯一信用できるのは、新しい会長(国見さん)と恩地さんだけです。 国見会長が「会長室」というのを設け、恩地さんを部長にしたことにも 周りの反発はすごいです。それでも恩地を信用している国見会長もすごいです。 「そんなに偉くなりたいか?」「そんなにお金が欲しいか?」と疑問になります。

それにしても、国見会長が給料を全く受け取っていないということには驚きました。 何から何まで正しいのに、それを貫こうとして、結果的に、辞職に追い込まれてしまうのは 本当にひどい。会長に就任する時もあんなに辞退を繰り返していたのに 「どうしても!」と頼まれたから引き受けたというのに。。会長が辞職するにあたり、 恩地さんも「自分も辞める」と言い出すのだが、会長は受け入れてくれない。 結局、国見会長の意志を継いで残ることになるが、会長室が解散した後の 希望ポストとして、「ご遺族お世話係」を選んだのは、いかにも恩地さんらしいと思った。
が!
会社側は、恩地さんに遺族のお世話係をさせることに不安を覚え、内定していたにも かかわらず、取り消しにされてしまいました。それだけでも充分ひどいのに、その代わりの 行き先がまたしても「ナイロビ」だったのには驚きました。どこまでやれば 気が済むんだ!と言いたくもなります。が、2年の任期で行くことを決意するところも 彼らしい。任期が終わったらお世話係りに戻りたいと言っていたが、また 邪魔されてしまうのではないか。。と心配です。

あ、でも、さんざん好き勝手をやってきた行天に、捜査の手が伸びてきたので、 トップ周辺が揃って入れ替わることも可能かも。。そうなれば、国見会長や 恩地さんが思い描くような、安全第一の国民航空に、今度こそ、変わっていくのかも しれない。が、本にはそこまでのことは書いてありませんでした。 最後は、恩地さんが、ナイロビに発つところで終わっていたが、何事にも前向きな 恩地さんはすごい。恩地さんのモデルになった方がいるようなので、 この話がある程度、ノンフィクションだと考えると、とても恐ろしい。 日本航空に対して、ちょっと見る目が変わってしまった。。 それにしても、よくこの本が出版できたな〜といろいろな意味で 感心しました。



「冷静と情熱のあいだ」辻仁成・江国香織


辻仁成さん、江国香織さんがそれぞれ、男性側、女性側に立って書かれた恋愛小説。 「きらきらひかる」を読んだだけだが、江国さんをあまり好きではなかったのだが、 趣旨が面白いと思って読んでみることにした。 辻さんの Blue と 江国さんの Rosso を、どちらから読むか。。と騒がれているようだったが、私は 自分が女だから、まずは女性の目から見た方を読もうと思った。でも2冊を交互に読むと言う人も いたようだ。私も本当はそのように読みたかったのだが、いつも電車で本を読んでいるため、 2冊持ち歩くのは重い という理由でやめた。

そういうわけで、まず、Rosso を読んだ。はっきりいって内容はそれほど面白くなかった。 が、ここでやめるのは悔しいので、Blue も読んでみることにした。

が、、、

どこの本屋に行っても売りきれ。しかも Rosso の方は山積みなのである。 大きめの本屋を3軒探した後に、小さい本屋に行ったら、1冊ずつ置いてあった ので、そこでようやく買うことができた。

読み始めたが、、こっちもあまり面白くなかった。 ただ、Rosso だけではわからなかった部分が2冊読むことによって納得できる 部分があったので、その部分に関しては「なるほど〜」と思わせるところがあった。 (雨の電話のシーンなど) 相手はこういう受け止め方をしていたのか〜と思った。でも2冊読み終わった今思うと、 先に Blue の方を読んでいたら、つまらなかったと思う。やっぱり Rosso 又は、交互に 読むのがいいと思う。交互に読む場合も、Blue を後に。。(^^; そうでないと、私は納得しないと思う。Rosso の方で残しておいた疑問を Blue で解決してる?と思ったので。でも実際に Blue を先に読んだ人は、また別の 感想を持ったかもしれないけど。。